定義
マーチンゲール法
マーチンゲール法は負けるたびに賭け金を倍にし、一度の勝ちで全損失を取り戻そうとする手法です。連敗の算術、ギャンブラーの破産問題、勝率 95% が優位性ではない理由。
マーチンゲール法とは、負けトレードのたびに次の賭け金を倍にし、最初の勝ちトレードでそれまでの損失をすべて取り戻したうえで基本単位ひとつ分の利益を得る、というポジションサイズの規則です。生み出される勝率は 95% を超えることも珍しくなく、見かけは華々しいのですが、それは大半の連敗が資金の尽きる前に終わるからにすぎません。問題は算術にあります。基本単位 10 ドルで九連敗すると損失は 5,110 ドルに達し、十回目には 5,120 ドル、累計 10,230 ドルの資金が必要になります。そして有限の資金で公平または不利なゲームに臨む場合、ギャンブラーの破産問題の結論として、長期的な破産確率は 1 です。
- 別名
- 倍賭け法 · マーチンゲール戦略 · グリッドマーチンゲール
計算方法
stake_n = base × 2^(n−1) (n = position in the losing run)
capital needed to survive n losses = base × (2^n − 1)
P(n straight losses) = (1 − p)^n
base = $10: nine losses cost 10 × (2^9 − 1) = $5,110; tenth stake = 10 × 2^9 = $5,120; total = $10,230
p = 0.5, n = 10 → 0.5^10 = 0.098% per ten-trade window, ≈1 such run expected over 1,000 trades
計算例: 基本単位 10 ドルなら賭け金は 10、20、40、80、160、320、640、1,280、2,560、5,120 と進み、十回目は 5,110 ドルを取り戻して 10 ドルを得るために 5,120 ドルを危険にさらします。
連敗は予定どおりにやって来る
各回の賭け金は基本単位に 2 のそれまでの連敗数乗を掛けたものなので、n 連敗を耐えるのに必要な資金は基本単位 × (2ⁿ − 1) となり、規則に吸収させる負けが一つ増えるごとに倍になります。勝率 50% なら、任意の十トレードの窓で十連敗が起きる確率は 0.098% で、遠い話に聞こえます。しかしこの窓を 1,000 トレードにわたって動かすと、そうした連敗の期待回数はおよそ 1 です。Grinstead と Snell によるギャンブラーの破産問題の扱いが示す一般的な結論はこうです。有限の資金で公平または不利なゲームに臨む者は長期的には確率 1 で破産し、マーチンゲールが変えるのはその速さだけです。
ケリー基準は負けた後に減らせと言う
ケリー基準の最適サイズは現在資金の一定割合なので、負けた後の次の賭け金は絶対額で小さくなります。MacLean、Thorp、Ziemba はケリー比率を超えて賭けると成長率が下がり大きな損失の確率が上がることを示しており、マーチンゲールは構造上つねに賭けすぎです。暗号資産の個人投資家向けの形が「マーチンゲールモード」付きのグリッドボットで、価格が下がるごとに買い増し量を拡大するため、同じエクスポージャーを別の包装で抱えることになります。鏡像にあたるのがアンチマーチンゲール、つまり勝った後に増やし負けた後に減らすピラミッディングやケリー型のサイズ調整です。QANTERION の四つの運用戦略はいずれも損失ポジションへの積み増しを行わず、それぞれ最大ドローダウンの上限のもとで動いており、これは正反対の設計判断です。
よくある誤読
マーチンゲール法は優位性と誤読されます。資産曲線が小さな勝ちの長く滑らかな階段になり、勝率が 95% を超えるからです。しかし勝率と優位性は別の量です。この規則は一回のトレードの期待値を変えず、損失の形だけを変えます。多数の小さな負けを一度の壊滅的な負けに圧縮し、その時期は分からないものの、トレード数が十分あれば到来は確実です。勝率 95% に平均利益の 19 倍の損失が一度組み合わさると、手数料前でちょうど損益ゼロになります。
出典
- Grinstead and Snell's Introduction to Probability — American Mathematical Society (CHANCE Project edition)
- A New Interpretation of Information Rate — J. L. Kelly, Jr., Bell System Technical Journal (hosted by Princeton University)
- Good and bad properties of the Kelly criterion — MacLean, Thorp & Ziemba, hosted by the UC Berkeley Department of Statistics
本用語集は教育目的です。ここに投資助言は含まれず、記載のいかなる指標も将来の結果を予測するものではありません。
定義を知るのは簡単な部分
ドローダウンの意味を知っていることと、それに達したら止まる仕組みを持っていることは別です。QANTERIONは戦略の稼働中にこれらの制限を実際に適用します。